黒い十人の感想

たまに感想を書く

サンドラ・ブロックの中に見いだされる母性/ゼロ・グラビティとバード・ボックス

新年あけましておめでとうございます。
大層なタイトルを付けたけれど、ちゃんと語るわけではない。
いつも通り適当に書いてるから適当に読んでくれ。

ビックリするくらい今更ではあるが、自宅で「ゼロ・グラビティ」を鑑賞。
開始即これを映画館で見ない人間は馬鹿では???となった。
自宅の普通のテレビでも分かるくらい映像が綺麗。

ただ元々自由に動けない空間(宇宙とか水中とか)怖い派なので見ている間はずーっと胃のあたりに変な感覚が生じていた。
手じゃなくて足裏に汗ダラダラ。終わったあと念のため床を拭いた。

とはいえ20分くらい経ったところで若干飽き始める。
映像は変わらず綺麗だし次々足裏に汗握る事件も起こるんだけど、延々とトラブルが起きすぎて若干ウケはじめてしまう。
もちろん延々とトラブルが起きること自体は全くおかしくない。
そうしないと映画が成り立たないわけで、ここで笑ってしまうのはこちらの不徳の致すところでございます。

鑑賞後になんでウケてしまったのかを考えたんですけど、ちょっと聞いてもらっていいですか?

・プロット自体はダイ・ハードなど普通のアクション映画とそんなに大差ないはず
・大目標(本作では地球へ生還すること)をクリアするため小目標(生還までの脱出劇)をクリアしていく
・その小目標をクリアするシーンが合間合間の見せ場になっている
・しかし本作には小目標に絡められるはずのサブプロットが存在せず「ヤバい状況から脱出して生き残る」という物語の芯がほぼ剥き出しで提供され続ける
・そのため主人公にふりかかるトラブルを本当にただのトラブルとしてしか見ることができず、映画の中で起こっているドラマに没入しきれない

これはちゃんとした映画館で見て映像の中に入り込んだ上で楽しむ映画なので、自宅で見て乗れなかったどうこういうのは本当にいちゃもんレベルの感想でしかないんですけど。

それよりゼロ・グラビティを見て思ったことがあるんですけれど「え? サンドラ・ブロックって母キャラだったの?」ということ。
なんでそんなことを思ったかというと、少し前に「バード・ボックス」見たんですよね。ネトフリオリジナル映画やつ。
公開順はゼロ・グラビティ(2013)→バードボックス(2018)なんですけど、こちらの都合で見る順が逆だったので「あ、なんか知らない間にこの人って母キャラになってたんだ」と驚いた。

そもそも「ゼロ~」と「バード~」は映画のテーマやつくりが結構似ているので、「ゼロ~」の演技見てサンドラに話が行ったのかな?と勝手に想像したりもした。

2作の共通点をざっと挙げるとこんな感じか。
・ディザスタームービー的なおもむき
・ヤバいところから脱出して生き延びるぞ!という物語の大目標
・主人公の変化と成長の方向性
・母子の関わり

ただ「バード~」のほうはサブプロットがあって、ストーリーを飲み込みやすいようかなりしっかりめに味付けされていた印象。
これは映画という表現媒体が同じでも、観客へのアプローチの仕方が違うと言うだけなのでどっちがいいというわけでもない。
個人的には「バード~」のほうが好きだったのだけれど、そりゃ自宅で見るなら劇場で浸ること前提の体感型の映画より、テレビで見ることを想定して作られた映画だよなあって話だし。

サンドラが母キャラになっていて驚いたと言ったけれど、それはあくまでロマコメに出ている印象が強かったので驚いただけで、キャラクターにはかなり馴染んでいたというか、むしろかなりのハマっていた気がする。
これまでの出演作のせいかハートフルな印象がある役者だけれど、「ゼロ~」も「バード~」もどちらかというとちょっとドライで近付きがたい雰囲気のあるキャラクターを演じていた。
しかし時折見せる柔らかい仕草や表情がキャラクターをより身近にし、同時に奥行きを感じさせる。
サンドラ・ブロック、いつの間にか役者として円熟の域に達していた。

「ゼロ~」も「バード~」も子供という存在を通して主人公のキャラクターが描かれていて、どちらも作話や話の展開方法としては結構好みの分類ではある。
バード・ボックスに関してはかなり慎重な話運びになっていて「タフなママが母性で解決」というオチには行かないようにしている所に特に好感を抱いた。*1
それは単に過度な母性神話が苦手だからなんですけど「子供ができたからと言って、心から親になれるわけじゃない」という部分が描かれていると安心する。

とか言いつつもゼロ・グラビティとバード・ボックスにおける「子供」という存在を同一のものとして扱うのは、ちょっと違うか?とも思ってたりする。
「ゼロ~」の子供は既に失われた存在で、「バード~」はこれから失うかもしれない存在という違いがあるので。
ただそのあたりの違いが、この2作品の差別化に繋がっているのかも。
前述の通り映画のテーマやつくりは似ているけれど、どちらもそれぞれ見る価値のある映画だ。

*1:それが悪いとは言わないが、個人的にはあまり好きではない。ただ「シリアル・ママ」とかコメディの文脈だと結構普通に受け入れて笑ってしまう自分もいる。