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黒い十人の感想

ドラマとか映画とか

はじまりの物語/ホットロード

ネタバレあり。

最近よく眠れない。仕事が微妙に落ち着かないせいだろう。
今日も結局寝れないまま朝になってしまった。
正直昨晩からそんな予感が薄々していたので、早い段階で仕事に行くのは午後からにしようと心に決めていた。
とはいえそろそろ寝ないとまずい時間なのだけれど、どうも眠れる気がしないのでホットロードの話でも書こうと思う。
これだけ昔の作品にネタバレありというのもナンセンスな気がするけれど、一応。


今年の初めに映画版のホットロードを見た。
人によって好き嫌いが分かれそうな作品だったけれど結構、というかかなり気に入って数日はホットロードのことを考えていた気がする。
というか会う人間会う人間に映画版ホットロードの話をした。
1人だけ原作を読んだことがある人がいて「いいよね」と言われた。
その人は非常に趣味の合う方なのでいずれ自分も読まないとな、と思いながらなんとなく先延ばしにしていたのだけれど、先日やっと手を着けた。
その日の夜も眠れなかったので早朝までにかけて読み切ったのだけれど、原作が面白いのはもちろん映画の秀逸さがよく分かって非常に興味深かった。

上に貼った映画についての感想記事ではあんまり内容には触れなかった気がする。
やっぱり映画版は圧倒的にビジュアルがよかったからかな。
原作者がのん(能年玲奈)に和希を任せたいと言ったというのがよく分かる。
はすっぱなのに純真というアンバランスさが似合う夢のような女の子だと思う。あと原作の和希は垢抜けて行くにつれてちょっと妖精っぽくなって行くのだけれど、のんはそれを十二分に再現していた。
春山も非常に合っていたんじゃないかな。映画版はちょっとゴツいが、まあそれは実写なんだから仕方ない。

原作を読んだ時始まり方が映画と全く同じで驚いた。
当たり前と言えば当たり前なんだけれど……テールランプのくだりがあって画面が切り替わり、和希の顔がアップで映ってそこから徐々にズームアウト。
同時に万引きをした和希を批難する大人の声が聞こえる。
でも彼女の耳にはそれは入らない。和希が求めているのはあくまで「ママ」の存在だからだ。

そのあとも帰宅して「ママ」と話して……と画角なんかもかなり細かく再現されている気がした。
その時見える「ママ」が恋人から貰ったプレゼントが白のコンバースというのがよく分からないがすごく好きだ。
あと女性キャラの衣装なんかはかなり細かく再現されていた気がする。
男性キャラは結構自由にいじられていた感じ。トオルなんて髪型が全然違う。でもたたずまいはなんとなく似ている気がした。

映画を見た時、序盤のあたりは結構エピソード単位の区切りがハッキリしていて見やすかったが少し違和感を覚えた。
けれど原作を読んで連載されていた漫画を脚本に起こしたのだからそうなるのも当たり前だと言うことに気付く。
序盤あたりはかなり丁寧に原作の展開を拾っている。
正直ホットロードはかなり読み辛い漫画だったのだけれど(コマ割が普通の漫画と全く違う。セリフもしゃべり言葉の持つ雰囲気を非常に重視しているので文字にすると読み辛い)映画を見ていたおかげでどうにか飲み込めた。

かなり正確に再現されているとはいえ、さすがに細かいエピソードははしょられたり、映画では一部のキャラクターが合体させられて1役で色々な役目を背負っていた……と思う。
細かいところはちょっとうろ覚え。すみません。

とはいえ大事な部分はしっかり拾われてかなり丁寧に映像化されていたと思う。
そして何より映画を見た際に感じた海辺の街の陰鬱とした雰囲気は意図的に演出されていた物なんだろうなと改めて思った。

タイトルにも書いたがホットロードは「はじまりの物語」だ。
生き方を知らない少年少女が痛みと衝動に身を任せながら、何を求めればいいかすら分からずもがき苦しむ。
本作において「生き方」というのは「愛」と同義だ。

和希も春山も愛を知らない故に家族から離れ、心から何かが欠落してしまう。
これは家族がいないから欠落が起こるというのではなく、あくまで春山と和希の場合という話だ。
たぶんホットロードの登場キャラクターの中には家族から離れることで心の欠落した部分を取り戻せる人物もいると思う。
宏子やトオルなんかはきっとそうだったんじゃないだろうか。
家族とのエピソードがほとんどないので完全なる推測だけれど。

和希と春山は「何も分からない」からと言い訳をして非行へと走る。
それはただひたすらに愛が欲しいからという渇望故なわけだが、本人たちに見えていないだけで二人の身近には常に愛は存在し続けた。
ただ和希ら子供たちも、彼らの両親である大人たちもどうしようもなく不器用で中々通じ合うことが出来なかったのが大きな問題だ。
それにしたって和希の母親はちょっとアレだとは思うけれど……。

けれど最後の最後、和希も春山も肉親からの愛を確認して、そして互いの間にも愛があることに気付いた。
だからこれまで自分の命を省みず生きていた春山が終盤は病院のベッドの上で「死にたくない」と口にする。
それは和希と出会い家族と和解し愛(=生き方)を知ったから。

まあ……こういうのすげー普通に感動する。
和希も春山の命が自分の大切な物であるのと同じように、春山にとっても自分の命は大切な物なんだと気付いて生きる気力を取り戻す。
青春群像劇+ラブストーリーというのは本当にいいですね。

あと和希の3年からの担任の先生がよかった。
後半は物語全体を導く裏の語り手みたいになっている。

そして最後、ようやく生き方を知った少年少女が二人で歩むことを決意して前に進み出る。
だから映画のラストも最後はこれまでの陰鬱とした色合いとは一転して、オレンジ色の眩しい光りに包まれた海岸に和希と春山が立つという図になる。
二人はようやく生き方を知り、未来へと向かうためのスタートラインに立てたわけだ……と思う。
きちんと分析するにしては色々と記憶が曖昧なので若干誤魔化させて欲しい。

映画版だけでも充分面白いとは思うのだが、原作と会わせると物語が更に味わい深くなる。
さすがに原作の方が尺が長いだけあって春山の掘り下げが丁寧だった。
映画だと「お天気屋」なことが分かるまで結構時間がかかる気がする。

序盤、和希と春山が初めて会う瞬間春山がキレるのとか見てて結構ビックリするしなあ。
豹変しすぎて「こいつヤバいやつでは?」となる。まあ実際ヤバいんですけど。

こんな感じでホットロードは非常にいい。最高。当然だが名作と呼ばれるだけある。
かなりの人が知っている作品だと思うので今更勧めるようなものではないのは分かってはいるが、それでも勧めたい。
原作→映画でもいいと思うし、映画→原作でももちろんいい。
できればこの二つを合わせて是非ホットロードの世界を味わって欲しい。

あまり考えずに書き始めたのでいつも以上にまとまりのない話になってしまった。
まあメモ代わりみたいなブログなのでそれでいいか。
そろそろ寝よう。大人が未来へと向かうスタートラインに立つのに一番重要なのは睡眠だから……。